プレスリリース

「研修実施で営業成績11.9%向上」「賃金は“コスト”ではなく“資産”」

リリース発行企業:Institution for a Global Society 株式会社

情報提供:

一橋大学大学院・小野浩教授と、一橋大学大学院特任教授兼Institution for a Global Society株式会社(以下、「IGS」)代表取締役会長CEO・福原正大が共同座長を務める「人的資本理論の実証化研究会」(以下、「本研究会」)は、人的資本と企業価値の関係性について、2024年度の分析結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。また、この度、本研究会では2025年度会員企業(有料)の募集を開始いたしましたので、お知らせいたします。

2024年度研究成果:人的資本と企業価値の関連性を示唆
本研究会では、2022年の設立以来、「人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか(人的資本の投資対効果)」を明らかにする取り組みを続けています。2024年度は参加企業のデータを基に、ISO30414指標とIGSのGROW(https://www.grow-360.com/ )によるスキル測定を用いた分析を実施し、以下2つの示唆を確認できました:
1. 人的資本投資のROIを計算、人的資本(能力)と営業成績の関連性を示唆(A社・1,000人以上の従業員のGROWによるスキル測定、エンゲージメント等のデータ)
- 実証の中で研究会が支援しているA社の取り組み(データを用いた計測・分析の開始から2年目)から得られた最大の成果は、階層ベイズモデルを用いて、人的資本(能力)と営業成績の関連性を分析したことです。 階層ベイズモデルを用いることで、部署や担当業務等の差異を考慮に入れることができます。
- 営業課題の異なる2つの営業部門(A部門、B部門)において、ESCO(欧州共通職務分類)に基づく「Jobレベル」の1段階向上が、A部門では営業成績が平均11.9%向上、B部門では6.0%向上につながるという具体的効果を数値化することに成功しました。
- 経営戦略に基づいたJobを定義し(スキルマップ構築)、その定義に沿って能力を測定した結果(スキルマップに準じた可視化)をふまえ経年分析を行った結果、
1. コンピテンシーの向上により、Jobレベルが上がる
2. 資格研修の実施により、Jobレベルが上がる
3. Jobレベルの向上により、個人営業成績が上がる
4. 資格研修の実施により、個人業績が上がる、ということがうかがえ、経営判断に有益な人的資本情報を提供する可能性を示唆しています。


個人営業成績に影響を与える要因について探索的分析を行い、因果パスが見えてきた

2. 「賃金」と「利益」の正の相関関係(12社のISO30414データ)
- 従業員1人当たり売上高は、総労働力コスト(相関係数=0.556, p値<0.05)と正の相関が示され、「人件費削減が利益向上につながる」という従来の考え方を覆す結果となりました。
- 1人当たり新卒採用コスト(相関係数=0.619, p値<0.1)および中途採用人数割合(相関係数=0.455, p値<0.05)も、売上高とプラスの関係にあります。
これらは、人的資本理論が主張する「人への投資が収益を生み出す」という考え方と整合的であり、人件費は単なるコストではなく企業の資産であるという仮説を支持する結果となりました。



一人当たり売上高と一人当たり総労働力コスト


一人当たり売上高と一人当たり新卒採用コスト


一人当たり売上高と中途採用人数割合

*一人当たり売上高は対数化したものを使用

参加企業からの期待とデータを用いた計測
研究会参加企業からは、「これまで感覚的に実施していた人材投資の効果を、理論と科学的データとで裏付けられるようになることは大きな成果」との声をいただいています。今回の結果をもとに施策を行っていき、最終的には企業価値への影響を計測していく想定です。
2025年度研究会:タレントマネジメントの進化と3つの専門分科会
2025年度は、「持続的な利益を生み出す人的資本戦略」をテーマに、過去3年間の実証研究で見えてきた因果パスと競合比較を活用した実践的アプローチを提供します。これにより、人的資本から持続的なキャッシュフローを企業が生み続けられるかの情報を、経営陣、そして投資家が取得可能となり、的確な経営や投資判断がしやすくなります。「実証から実装へ」のステージに進むことに伴い、以下の3つの専門分科会を新設します:

<分科会1> 人的資本理論の実践
- 特長: スキルマップをベースに、競合企業や業界標準をふまえ、自社の強み・弱みの可視化、企業価値と人材ポートフォリオの定量化、人材施策ROI計算等を個社文脈で実施
- プログラム:全7回の定例勉強会+1回の全体勉強会+実践支援(生産性指標と人的資本指標の関連性分析、能力データ収集支援) (予定)
- コーディネーター:小野 浩 共同座長・一橋大学大学院教授


<分科会2> サステナビリティ情報とインパクト会計
- 特長:企業の持続的な成長戦略につながる統合報告書の充実を目的に、非財務情報の可視化やインパクト加重会計の理解を深め、自社におけるインパクト算出を試みる
- プログラム:全6回の定例勉強会+1回の全体勉強会+実践支援(インパクト算出プロセスの実行支援等)(予定)
- コーディネーター:野間 幹晴 一橋大学大学院教授


<分科会3> グローバルCHROエグゼクティブプログラム(多摩大学大学院共催)
- 特長:データ活用、組織文化変革、リーダーシップ強化を中心に学び、経営視点で人材戦略を立案・実行できるCHRO(候補者含む)を育成
- プログラム:全10回の勉強会+1回の全体勉強会、アカデミアおよび実務家によるリアルな講義とケーススタディ等の議論、受講者への個別アドバイスや支援(予定)
- コーディネーター:徳岡 晃一郎 多摩大学大学院名誉教授 兼 株式会社ライフシフトCEO

各分科会の年会費や参加条件、詳しいスケジュール等は、お問い合わせください。説明会や個別相談も実施しておりますので、あわせてご検討ください。また、各分科会は、2025年6月のスタートを予定しております。なお、開催時期や内容等は今後変更となる可能性があることをご了承ください。


<プレ勉強会&説明会のご案内>

プレ勉強会&説明会のご案内・個別相談も実施中

- こんな方におすすめ:企業の人材開発部・人材戦略部などに所属する方、その他経営企画部等で、経営戦略と人材戦略を結びつけた実践的な施策を検討する方
- お申し込み方法:次のURLより事前登録をお願いいたします  https://hc-cv-research.jp/news/seminar_2501?utm_source=pressrelease&utm_medium=link&utm_campaign=hccv2025   
- - 説明会は上記以外の日程でも順次開催予定です。他日程でのご参加や個別相談をご希望される場合も、同URLからご登録ください。
- - お申込み締め切りは、開催日の前日12:00です。ただし、オフラインは会場定員に達し次第、期日より前に募集停止する場合がございます。あらかじめご了承ください。

共同座長からのメッセージ

小野 浩 一橋大学大学院教授
小野 浩 一橋大学大学院教授企業の持続的な成長にとって人的資本への投資が不可欠であることは、多くの研究で示されています。しかし、どのような人的資本投資が本当に効果を生むのか、企業ごとに異なる環境の中で明確な指針を持つことは容易ではありません。本研究会では、理論と実証の両側面から人的資本についての理解を深め、データとエビデンスに基づいた実践的な知見を提供します。特に、経営戦略と人材戦略をどう結びつけるか、人的資本投資がどのように企業価値向上につながるのかを、体系的かつ実証的に解明することを目指します。2025年度は、より多様なアプローチを可能にするために、企業の課題に応じた選択肢を広げました。人的資本を理論的に理解し、実践へのステップを進める場として、ぜひ本研究会をご活用ください。





福原 正大 一橋大学大学院特任教授 兼 Institution for a Global Society株式会社 代表取締役会長CEO
福原 正大 一橋大学大学院特任教授 兼 Institution for a Global Society株式会社 代表取締役会長 CEOお陰様で本研究会は2025年度で4年目を迎え、理論とデータに基づく人的資本の可視化・コントロールを通じ、企業価値を高める企業が増えています。一方タレントマネジメントシステムの導入が進むなか、そのデータや仕組みを企業価値向上へどう活かすかが、より重要なテーマとなっています。こうした背景をふまえ、今年度は3つの分科会を新設しました。「人的資本理論の実践」では、理論を深めつつデータ分析を活用し、人的資本のROI向上を目指します。「人的資本と社会的インパクト可視化・投資」では、非財務情報を可視化し、投資家との対話を強化します。「グローバルCHROエグゼクティブプログラム」では、経営視点で人材戦略をリードするCHRO育成を行います。本研究会を通じて、人的資本経営のさらなる進化を共に目指していければ幸いです。



■本件の問い合わせ先
〇研究会へのお問い合わせ:「人的資本理論の実証化研究会」運営事務局(中西・西野)
E-mail: hc-cv-research@i-globalsociety.com
〇取材に関するお問い合わせ:「人的資本理論の実証化研究会」運営事務局 広報担当(川村) 
E-mail: pr@i-globalsociety.com
【APPENDIX】
「人的資本理論の実証化研究会」発足背景
2023年3月期決算から義務化された「人的資本の情報開示」以来、人的資本の指標に関する議論が行われています。本研究会は、日本企業がこれらの開示にとどまらず、「人的資本が企業価値にどれだけ寄与するものか(人的資本の投資対効果)」を明らかにすることで、経営者へデータに基づいた人材施策の投資判断を促すと同時に、投資家への戦略的な情報開示を実現するため、2022年に発足しました。2024年度は18社の企業が参画しています。
- HPhttps://hc-cv-research.jp/
- 2022年度の研究成果: https://hc-cv-research.jp/news/press_230323
- 2023年度の研究結果: https://hc-cv-research.jp/news/press_240416  
- 2024年9月発表『「人的資本の投資対効果」開示レーティング~有価証券報告書 日経225版~』 https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/1YWjY3EYam/s-1x1_dce2e494-5278-4a38-89e5-944f5de1ee1c.pdf  

本研究会の人的資本に関する考え方
本研究会では、ノーベル経済学賞を受賞した故ゲイリー・ベッカー教授の人的資本理論に基づき、「人の能力こそが企業価値の源泉であり、“人的資本”である」と捉えています。エンゲージメントやダイバーシティは、人的資本(能力)を企業価値に効果的に繋ぐための条件として「人的資本(能力)の発揮度」と位置付け、コンプライアンスや人権意識などは、それらが欠けることで企業価値にマイナスの影響を与える「人的資本起因のリスク」と位置付けています。つまり、人的資本(能力)は、人的資本(能力)の発揮度と掛け合わさることで、企業価値向上にプラスのインパクトを与え、他方で「人的資本(能力)起因のリスク」が外在的に制約を加えるという構造です。
したがって、持続的な企業価値向上のためには、人的資本そのものと、人的資本の発揮度等を含めた「Human Capital Potential Factor(人的資本の潜在ファクター)」を定量化し、企業価値にどのように寄与しているのかについての投資対効果(ROI)を検証していくことが重要であると考えております。
ベッカー教授のもと学んだ小野教授とともに、IGS提供のGROW活用を含め、人材能力データ・財務データ等の企業の実データを分析し、研究を進めています。

<人的資本と企業価値のフレームワーク>

GROWについて:企業価値と人的資本の最適化を実現する総合分析プラットフォーム
GROWは、企業の持続的成長と競争優位性の源泉となる「人的資本」と「企業価値」の因果関係を科学的に分析・可視化するアセスメントプラットフォームです。
人的資本と企業価値の関係性において最も重要なのは、ROIを含む因果マップと業界スキルマップを構築することで競争優位性を定量的に計算し、持続的な利益創出までを科学的に予測できることです。これにより、人的資本への投資が企業価値向上にどれだけ貢献するかを明確に示し、経営者が真に価値ある意思決定を行うための強力なエビデンスを提供します。
詳細は、公式サイトをご参照ください:https://www.grow-360.com/

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