この度、アルテマイスター株式会社保志は、独自の漆芸技法をもつ木漆工芸家・十時 啓悦(ととき あきよし)氏から直接指導を受け、十時氏監修の新作厨子「時跡(じせき)」を開発いたしました。
左から「時跡 黒」「時跡 朱」「時跡 錆」
”時が刻み込んだ跡”を意味する厨子「時跡(じせき)」
卓上サイズの厨子「時跡(じせき)」には、時が刻み込んだ跡、過ぎ去った出来事の痕跡といった意味が込められています。扉の装飾に力を入れた、3種類が展開されています。
【時跡 錆(さび)】扉は砥の粉の色を生かしつつ、錆漆の荒々しい質感を際立てました。
【時跡 黒】樹皮や水面のような模様が印象的な錆付けと、落ち着いた艶感の黒い色味が特徴。
【時跡 朱】シンプルな櫛目模様に、「十時の朱」と呼ばれるほど特徴的な、艶を落とした明るい朱色の扉に仕上げました。
木漆工芸家・十時 啓悦氏から継承した、独特のダイナミックな漆芸表現
十時 啓悦氏は、武蔵野美術大学の名誉教授であり、日本文化財漆協会参事として漆についての造詣の深い木漆工芸家の重鎮として知られています。
■作家紹介
十時 啓悦(ととき あきよし)| 木漆工芸家
1950年 大阪府豊中市生まれ
1973年 武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン学科工芸工業デザイン専攻卒業
1975年 東京藝術大学大学院 美術研究科 漆芸専攻修了後に漆芸家の野田行作に師事
1977年 日本クラフト展優秀賞受賞
1981年 日本クラフト展優秀賞受賞
1986年 日本伝統工芸新作展奨励賞受賞
2003年 青梅クラフト館設立
現在、日本文化財漆協会参事、武蔵野美術大学名誉教授
十時氏は木地づくりから漆塗りまでを一貫して自らの手で行い、布目や刷毛目跡など大らかな漆芸表現の作品が魅力です。今回の厨子の開発にあたっては、その大らかでダイナミックな技術を取り入れるため「漆をふんだんに使用し、その魅力を伝える厨子」をコンセプトに、十時氏による直接指導のもと、技術の継承から始めることとなりました。
十時氏からの「錆付け」のレクチャー風景
中心となって指導を受けたのは、当社アルテマイスター製品全般の装飾や技術開発、研究を担う部門に所属する入社7年目の社員。自身もまた東京藝術大学で漆芸を学び、現在も本業に従事する傍ら、作品づくりを続けています。
特徴的な錆付けの質感や漆の配合などを取り入れ、さらにそれを製品として耐えうる品質にするため研究し、精度を高めていきました。
職人の手仕事が息づく、錆漆仕上げの扉が完成
観音開きの扉には、伝統的な「錆漆(さびうるし)」仕上げが施されています。錆漆は、砥の粉を水で練り、生漆(きうるし)を加えて用いる漆芸技法のひとつで、器物の強度を高めるとともに、深みのある美しい質感を生み出します。
一つひとつ丹念に施された錆付け模様からは、職人の確かな技と手仕事の温かみが伝わってきます。
左から錆、黒、朱
荘厳な趣を醸し出す、箔の表現
扉の装飾に合わせ、背板には異なる箔を用いています。「時跡 錆」には深みのある金箔4号、「時跡 黒」と「時跡 朱」には上品な輝きを放つプラチナ箔を採用。刷毛目の模様に施した箔が、空間に荘厳で趣き深い印象を与え、存在感を一層引き立てています。
左から金箔4号箔(錆)、プラチナ箔(黒・朱)
長くお使いいただくために。取り出し可能な台座を付属
生活が変化する中で厨子に納めるものが変わっても、長くお使いいただけるよう、取り出し可能な台座が付属しています。本体と同じ仕様で、表面はウレタン仕上げになっているため、汚れた際には乾いた柔らかい布で優しく拭いてお手入れできます。
サイズは高さ3.6×幅10.6×奥行7.5cm