国際NGOプラン・インターナショナル(所在地:東京都世田谷区、理事長:池上清子、以下プラン)は、日本におけるSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の実現を目指して、他団体、専門家、企業、行政など多様なステークホルダーと連携した、「SRHR for JAPAN #一億人のためのSRHR」キャンペーンを2025年7月30日(水)より開始します。世界経済フォーラムが発表した2025年のジェンダーギャップ指数において、日本は148カ国中118位と、G7の中では依然として最下位に位置し、特に政治や経済分野での女性参画が遅々として進んでいないことが明らかになりました。また、後述するように現在の日本社会には、格差や不平等によるさまざまな課題が山積しています。日本社会がジェンダーギャップを克服し、すべての人が、自分の心と身体、人生や人間関係について、自らの意思で選び、決めることができる社会の実現のためには、SRHRを積極的に推進することが求められています。本キャンペーンでは、制度・教育・文化の3つの側面からSRHRに関する課題解決を目指すとともに、広く社会に向けてその重要性を訴えかけます。そして、この度、キャンペーンに先立ち、全国の15歳~64歳の男女10,000人を対象に実施した、SRHRに関する国内最大規模の意識調査の結果をご報告します。
??SRHRについて
SRHRとは、私たち一人ひとりが、自分の心と身体、そして人生や人間関係について、正しい情報にアクセスし、自分の意志で選び、決定できる権利のことです。例えば、自分の身体や性に関する正しい知識を得ること、望まない妊娠や性暴力から守られること、誰を好きになり、どう生きるかを自分で決めること、妊娠・出産・避妊について安心して選択できること、こうした基本的な「選ぶ自由」と「尊重される権利」は、すべてSRHRの一部となります。
「SRHR for JAPAN」では、このような誰もが自分の人生を、自分の手で選び取ることのできる社会の実現を目指し、今後4年間にわたり、活動してまいります。
SRHRに関する課題
現在の日本社会では、SRHRが十分に実現されておらず、その結果として多くの深刻な問題が生じています。具体的には、性に関する正しい知識が広まっていないことや、性と生殖の選択に関わる権利が制限されることで、性別や性的指向を理由とした差別や不平等が根強く存在しています。女性やLGBTQ+の人々が自身の身体や生き方に関する自由な選択を行うことが困難である状況や、社会的偏見による孤立などの問題が依然として解消されていません。
また、性暴力は重大な社会問題でありながら、十分な対策が講じられていない現状があります。被害者が声を上げにくい環境もあり、性的同意の重要性も十分に認識されていません。
さらに、医療サービスへのアクセスが不十分なことも深刻な課題です。安全な避妊方法や緊急避妊薬(アフターピル)、性感染症の予防や治療、人工妊娠中絶 や妊娠・子育てに関するサポートを受けるための医療が、経済的・地理的な制約によって利用しにくい状況が続いています。
適切な性教育や医療を受けられないことから、特に弱い立場に置かれた人々の予期しない妊娠や性感染症のリスクが増加し、教育機会や雇用の不安定化に繋がりやすいという悪循環が生まれています。
SRHRが実現されていないことは、差別や不平等から貧困まで、複雑かつ多岐にわたる社会問題を生み出しており、根本的な対策と認識の向上が求められています。
??調査概要
調査名:SRHR white paper 2025「SRHR/性と生殖に関する健康と権利に関する意識調査」
実査時期:2025年 4月 25日(金)~ 4月 28日(月)
調査方法:インターネット調査
調査対象:男女×15-64歳、若年層(10-20代)に比重を置いて回収
回答者数:10,000名
調査レポート「SRHR white paper 2025」
URL:https://srhrforjapan.com/whitepaper/2025whitepaper_1.pdf
??調査背景
日本では、誰もが自分らしく生きるために不可欠なSRHRについて、いまだ十分に認識・尊重されていない側面が多く存在します。本調査は、SRHRをすべての人に保障する社会の実現に向け、日本における現状を把握することを目的として実施したものとなります。
全国1万人を対象に、日常生活の中で人々が何を大切に思い、どのような選択や権利が十分に守られていないと感じているのかを明らかにしました。
??調査結果サマリー
<SRHR浸透状況について>
・日本のSRHR認知率は25% 理解は9% 若年層ほど認知率・理解率が高い結果に。
<SRHR重視意識/尊重意識>
・SRHRを「大切だと思う気持ち」と「尊重されている実感」の間に大きなギャップ。
・重要だと思う項目 女性30代から50代 各年代1位は「性的な行為の決定権」
・尊重されている項目「恋愛・結婚の自由」や「からだのプライバシー権」が上位に。
「どのような性を表現するかの自由」 大人世代で尊重実感が薄いことが明らかに。
<SRHR尊重実感の薄い項目>
・男女含む全年代 尊重実感なし1位に「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」
<SRHR男女のギャップ>
・男性は女性よりも、SRHR認知が10%高い一方、重要意識・尊重実感が低い傾向に。
<尊重されてないSRHR>
・女性は 「安全で喜びのある性経験・性的な行為の決定権・避妊の自由」などの尊重実感が希薄。
男性は、「性的な行為の相手を選ぶ自由」 が尊重されていないと感じる傾向。
・性を学びたい10代 7割。年齢が上がるほど、学習意向が低減。
・性的同意 認知は85% 学習経験 18% 「毎回同意取れている自信がある」 約30%。
??調査結果
【SRHR浸透状況について】
日本のSRHR認知率は25% 理解は9% 若年層ほど認知率・理解率が高い結果に。
認知経路は「テレビ」「インターネット」など。若年層は「SNS」「学校教育」が特徴。「家族」「職場」経由は1割に満たない結果に。
若年層でSRHRの認知・理解が進んでいる背景には、近年の学校教育における性教育カリキュラムが次第に充実してきていることや、SNSが重要な役割を果たしていると考えられます。
一方、上の世代の認知・理解率は若者層を大きく下回り、テレビなどのマスメディアやインターネットが主な認知経路に。若い頃に包括的な性教育を受ける機会が少なかったうえ、成熟した今も画一的な学び直しの場がないため、人によって情報格差が大きく、若者世代の知識に追いついていない状況が伺えます。
【SRHR重視意識/尊重意識】
SRHRを「大切だと思う気持ち」と「尊重されている実感」の間に大きなギャップ。
SRHRに関する以下13の項目について重要意識と尊重意識を10,000人に聞きました。
1. からだのプライバシー権
2. どのような性を生き、表現するかの自由
3. ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと
4. 安全で喜びのある性経験を持つこと
5. 性的な行為をするか、しないかの自由・選択権
6. 性的な行為の相手を選ぶ自由
7. 結婚の自由・選択権
8. 子どもを持つ、持たない自由
9. 恋愛の自由・選択権
10. 避妊の自由・選択権
11. 妊娠等での医療ケアへのアクセス
12. 性感染症等の医療ケアへのアクセス
13. 性と生殖に関する情報へのアクセス
重要意識: (それぞれの項目について)あなたはどの程度大切だと思いますか。尊重意識: (それぞれの項目について)あなたの普段の生活でどの程度尊重されていますか。※2 SRHRに関する13の項目の重要意識・尊重実感意識を点数化。High層:平均点4.5以上。Middle層:平均点4.5未満、3.0より高い。Low層:平均点3.0以下。
「大切だと思っている気持ち」と、実際に「尊重されている実感」の間には大きな隔たりがありました。特に、「病気・妊娠・出産・不妊治療に必要な医療」や「正しい情報へのアクセス」では約20%とギャップが大きく、社会的・制度的フォローの不足が背景要因として浮かび上がります。
【SRHR重要意識】
重要だと思う項目 女性30代から50代 各年代1位は「性的な行為の決定権」
各項目における重要意識を見てみると、男女ともに、「恋愛・結婚・子の有無の自由」や、「妊娠等での医療ケアアクセス」がほとんどの年代で上位5番内にランクイン。「性的な行為の決定権」については、女性30-50代は9割超が重視し、項目のなかで最も反応率が高い一方、男性30-40代の重視率は8割にとどまり、反応率は4-5番目と低い傾向に。
また、「からだのプライバシー権」については、男女ともに10代、50-60代が重視している傾向が明らかになりました。
【SRHR尊重意識】
尊重されている項目「恋愛・結婚の自由」や「からだのプライバシー権」が上位に。
「どのような性を表現するかの自由」 大人世代で尊重実感が薄いことが明らかに。
性年代問わず「恋愛・結婚の自由」「からだのプライバシー権」は尊重されている実感が高く、「どのような性を生き、表現するかの自由」については、男女ともに若年層が5位内にあげる一方、上の年代層では上位5番内に入らない結果に。
「性的な行為の相手を選ぶ自由」については、女性で上位5番内にあがるものの、男性では上位5番内に入らないなど、男女間で差が。
【SRHR尊重実感の薄い項目】
男女含む全年代 尊重実感なし1位に「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」
全体で「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」が最も尊重されていない項目に。特に20~
30代の若い男女でその意識が強く、仕事やプライベートの面で様々なジェンダー課題に直面している様子が伺えます。「女性であることだけで、社会的に不利な扱いをされたり、女のくせにと舐められたり、女性をターゲットにした性的な眼差しにさらされる。」(女性/30代)、「男らしさや甲斐性のようなものを求められる。女性に比べて声をあげることも少なく、男女ともに男性像のアップデートはほとんどされていない。」(男性/20代)などの声が上がりました。
【SRHR男女のギャップ】
男性は女性よりも、SRHR認知が10%高い一方、重要意識・尊重実感が低い傾向に。
男性のSRHR認知率・理解率は女性よりも高い一方、SRHRに対する重要意識は24%低く、尊重実感は13%ほど女性より低い結果に。特に男性20-40代でその傾向が強いことが明らかになりました。
その背景に、男性はSRHRを知っていても“自分のための権利として認識していない”、つまり当事者意識が育ちづらい現状を示していると考えられます。また、ジェンダーやSRHRについて語られる際、女性を対象とした文脈が多く、「男性も当事者である」「男性にもSRHRに関わる権利がある」という視点が欠けていることが多いことが関係している可能性が考えられます。
【尊重されてないSRHR】
女性は、 「安全で喜びのある性経験」などの尊重実感が希薄に。
男性は、「性的な行為の相手を選ぶ自由」 が尊重されていないと感じる人が多い。
女性では、「ジェンダーに基づく暴力や強制がないこと」に次いで、「安全で喜びのある性経験をもつこと」などが尊重されていないと感じる人が多い結果に。
「行為を強要されることが頻繁にあった。不機嫌になるので仕方なく耐えていた。喜びなどは一度も感じたことはない。」(女性/50代)「基本的に性行為を好まないので、相手に気遣って半ば無理にすることもあるため」(女性/40代)などの声が上がりました。
男性は、2番目に「性行為の相手を選ぶ自由」が尊重されていないと感じており、「妻がしたい時にしか性行為ができない。私の意向は無視される傾向」(男性/40代)など、自分の望むタイミングで性行為ができないことへの不満がみられました。
大前提、SRHRは、「したいときに性行為ができることを保証する権利」ではない上で、「相手の意思を尊重すること」と同時に、「自分の意思をどう伝えるか」「断られたときにどう向き合うか」など、関係性の中でのコミュニケーションを学ぶ機会が不足していることの表れとも考えられます。
【性知識の学習意欲】
性を学びたい10代 約7割。年齢が上がるほど、学習意向が低減。
若い年代はSRHRの認知・理解も高いが、性の知識の学習意向も高い結果に。
学習意向が高い若年層からは、「学校ではオブラートに包みすぎて大事なところが欠けている」(男性/15-19才)、「まだ日本は女性ばかりがリスクを負わないといけない部分が大きい。女性である自分を守るための術を持つ必要があると思うから」(女性/15-19才)などの声が上がりました。
【性的同意】
性的同意 認知は85% 学習経験 18% 「毎回同意取れている自信」 3割未満
性的同意の認知は8割を超える一方、具体的な理解が伴っているのは世の中全体の半数に留まっています。「言葉を知っている」ことと「本質を理解している」ことの差が可視化されており、教育内容の見直しの必要性が伺えます。また、性的同意の学習経験に関しては、50代以上は1割を下回り、全体で
18%という結果に。
性的同意を重要視する意識は約9割と高いものの、毎回同意が取れている自信があるのは3割に満たず、重視度との間にはギャップが。「性的同意は大事」という認識が広がってきている一方で、実践につながっていない現状が改めて浮き彫りになりました。
SRHR for JAPANは、本調査から見えてきた日本の現状を踏まえ、2025年~2028年の4年間にわたり、命と心を守る教育の拡充を働きかける活動を通じて、自分の身体と心を理解する機会をすべての人に保障し、互いを尊重しながら安心して自分らしく生きられる社会の実現をめざします。
■「SRHR for JAPAN」について
「SRHR for JAPAN」は、多くのステークホルダーとの連携のもと運営するキャンペーンです。
【ステートメント】
未来を選べること。それが、あたりまえの社会であってほしい。
たとえば、いつ・どこで・誰を好きになるか。どんな働き方をしたいか、
どんな家族や関係を築きたいか、そして、どんなふうに生きていたいか--。
こうした問いに向き合いながら、自分の心や身体、大切な人との関係、
そして一人ひとりの権利について学び、語り合い、お互いの違いや選択を尊重し合うこと。
私たちは、誰もが自分の人生を、自分の手で選び取ることのできる社会をめざします。
SRHR for JAPAN ウェブサイトURL:https://srhrforjapan.com/
【組織概要】
・ 主体団体:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
・ キャンペーンサポート(国際機関):国連人口基金 駐日事務所(UNFPA Tokyo Representation Office)
・キャンペーンパートナー(正式連携団体):公益財団法人アジア人口・開発協会、
公益財団法人ジョイセフ、一般社団法人SRHR Japan
・ キャンペーンブリッジ(強い関与を持つ連携団体):一般社団法人Spring
・ キャンペーンアライ(協力 NGO・専門家ネットワーク):SRHRに取り組むNGO、専門家、
アクティビスト、支援団体
・ キャンペーンエキスパート(専門家・専門団体):産婦人科医、助産師、養護教諭、看護師、
ジェンダー・性教育専門家
・ キャンペーンアライアンス(企業)
*本事業は、シャネル財団の助成を受けて実施されます。
■「国際NGOプラン・インターナショナル」について
国際NGOプラン・インターナショナルは、誰もが平等で公正な世界を実現するために、子どもや若者、さまざまなステークホルダーとともに世界80カ国以上で活動しています。子どもや女の子たちが直面している不平等を生む原因を明らかにし、その解決にむけ取り組んでいます。子どもたちが生まれてから大人になるまで寄り添い、自らの力で困難や逆境を乗り越えることができるよう支援します。
https://www.plan-international.jp/