新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける高円寺のライブハウス2店の店長に、現在の状況を聞いた。
「3密」(=換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、間近で会話や発声をする密接場面)といわれる条件がクラスター(患者集団)発生につながりやすいとされる新型コロナウイルスの特徴から、国や都の自粛要請を受けて全国のライブハウスやホールでイベントの中止が続いている。ミュージシャンやライブハウス関係者による「新型コロナウイルス感染拡大防止のための文化施設閉鎖に向けた助成金交付案」(#SaveOurSpace)も30日夕方時点で目標の2倍となる20万筆の署名を集めている。
――新型コロナウイルスの影響でキャンセルになったイベント数は?
「11本」(ShowBoat店長・遠田さん)、「15本くらい」(LIVE MUSIC JIROKICHI 店長・金井さん)
――収益での影響や今後の見通しは?
「もともとの見通しの3~4割減。3月半ばを過ぎてライブハウスだけでなくいよいよ本格的に国全体へ自粛のムードが広がり4月はここから先も厳しい状況が続く気がする。感染拡大も恐いが、不安が募る世間からの風当たりがさらに強くなるのではという恐怖もある」(遠田さん)、「収益は当然悪化し、営業を再開しても集客は厳しいと予想している」(金井さん)
――衛生管理で現在行っている対策は?
「スタッフのマスク着用、うがい手洗い徹底。開店時、閉店時に共有部やドアノブなどの消毒。バンド入れ替え時にマイクをアルコール綿で消毒、営業後は外して洗浄。リハーサル時からの定期換気(バンド入れ替え時や演奏が止まっている時)。消毒薬を置き、客入れ時に消毒のお願いを呼び掛け」(遠田さん)、「アルコール消毒液の配置、一時間おきの換気、閉店後の消毒、来店いただくお客さまへの注意喚起」(金井さん)
――衛生管理以外で新たに始めた試みやイベント、今後やってみたいこと
「配信ライブや舞踏イベント(踊りのみ、声は発しない)。今後やってみたいことは(換気を確保し騒音を押さえるために)扉を開け放してのアコースティックライブ(アンプラグド)」(遠田さん)
――ライブハウスでの無観客ライブ(無料・有料問わず)などに対しての意見は?
「この状況をしのぐ目的でお客さまの満足やアーティストの方の収入につながるのはいいと思う。配信ライブが主となって根付いてしまった場合、現場に足を運ぶ方がこれまで以上に減るのでは、という危機感もある。現在の状況が無事に過ぎ去った時、演者と相対して生の音楽を楽しむというライブハウスの良さを残せるのかどうかやや不安」(遠田さん)
――イベンター、出演者、他のライブハウスへのメッセージ
「それぞれの環境、状況ですでに十分に考え、頑張っていると思う」(遠田さん)、「今は、耐えるしかない。がんばりましょう」(金井さん)
――自粛要請やライブハウスを巡る報道について
「自粛に反対するつもりはない。ライブハウスや音楽業界がクラスターになり得るとしてピンポイントでこだわるのであれば(自粛に対しての)保障が欲しい」(遠田さん)、「ライブハウスばかりを悪者にするような発言や報道に対し激しい憤りを感じている。ライブハウスに関わる人やお客さま、ミュージシャンを差別的に扱う風潮には我慢ならない。ライブハウスが悪者扱いされて、何らかの補償を考えてくれないと音楽が死んでしまう」(金井さん)
――利用客へのメッセージ
「自分の体を第一に、事が過ぎ去った時にはぜひライブハウスに足を運んでほしい。演者と相対して音楽を全身で感じることができるというのはとても特別なことで、きっと皆さんを元気にするはず」(遠田さん)、「このような状況の中、ご声援、ご支援を賜り、感謝しかない」(金井さん)
最後に遠田さんは「まだ渦中ではあるが、今回のことは衛生観念の見直しや世間におけるライブハウスのイメージが再確認できるきっかけになったと思う。新しいやり方を見つけていく、あるいは現状が改善されてさらに発展していく明るい道が残されているようにと願っている」と結ぶ。